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哲学の教科書 著者:中島義道
真の哲学者
ほとんどすべての自称哲学者は哲学評論家にすぎないからです。かくして、とくにわが国の現状では職業としての哲学者は、「哲学研究者」プラス「哲学評論家」に分解されると、あとに残るものはほとんどない。もう一度確認します。哲学者とは、時間や存在や自由や自我などについてのさまざまな理論ではなく、全身をもってこうした「事柄」そのものと格闘しその「戦記」を血の言葉で語る人のことです。ニーチェはそうでした。ハイデガーもヴィトゲンシュタインもそうでした。わが国においても西田幾多郎や田辺元はそうでした。
街の哲学者
むしろ市役所に勤めながら・農業をしながら・漁船に乗りながら・タクシーの運転手をしながら、「時間」や「私」について思索し、カントやヴィトゲンシュタインを理解し、さらに論文を書くことすら場合によって可能だと言いたい。どこかにそんな人いないかなあと、いつかふとめぐり会えるのを心待ちにしているのですが、きっとどこかにひっそりと生きているんでしょうね。職業哲学者の養成 さて、こういう「隠れて生きる」哲学者がいたら本当にすばらしいのですが、
まったく無知なわたしでも面白かった。